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子どもと野菜と包丁と
割合に薄切りやら、千切りやらが得意だ。キャベツの千切り、お正月の紅白なます、きんぴらごぼうは歯触りよく、うつくしくと心の中で念じながら包丁を握る。

野菜を刻むのに一番なのは、やはり菜切り包丁。実家ではだいたいはステンレスの牛刀を使うことが多かったが、結婚して夫の母が使っていた菜切りを貸してもらったら使いやすくて気に入った。しばらくのちに、たまたま近所のスーパーでの有次フェアで買い求めた。わたしの手持ちの包丁はステンレスの牛刀、ステンレスのペディナイフ、パン切りとこの菜切りの4本だ。

たいていはペディナイフで肉でも魚でも野菜でも切ってしまうが、やはり野菜を切るのは菜切りがもっとも適している。薄切り、千切りの類はもちろん、里芋の皮をきれいにむく、かくし包丁を入れるときなど、なんてことないようなときにもやっぱり使いやすい。名前のとおり、菜っ葉を刻むのもきもちよくいく。

買ったときには鋼の包丁をきちんと自分で研げるだろうか、と心配だったが年月とともに多少上達しているように思う。月に一度くらいだが、ちょっとした時間の合間に砥石を出して、菜切りとペディナイフを研ぐ。しょーり、しょーり、しょーりと一定のリズムで研いでいると、明日からの家のご飯がおいしくできる気がしてくる。また、昔話の山の婆のようになにやら魔術めいた気持ちもしてきて、楽しい。

よく切れるようになった包丁を新鮮な肌の張った野菜に当てると、一瞬わたしも野菜も身のすくむ気がする。その一瞬ののち、鮮やかに野菜は切れているのだ。うちの一番小さな子が料理をするとき、自分の椅子を近くに引きずってきて、一心にわたしの手元をのぞき込む。赤いトマトを半分にすれば、そこにはどろりとして粒を含んだ種があり、茄子を切れば濃紫の肌から想像できない色っぽい白さ、ピーマンは小室のような空洞が広がっていて、自然の造形はなんと不思議でうつくしいことだろうか。

○はりつめし茄子のはだへに刃を当てつ右の耳朶すくみてゐたり
○トマトあか、なすは白くてピーマンはからつぽだねえ、ねえおかあさん  美衣