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おまへはトマト
今年の夏、16歳の長男が自転車ひとり旅に出た。神奈川から広島までなんとか8日間でたどり着き、久しぶりに会った息子は真っ黒く日焼けして、二回りほど痩せていた。

大変だったからもう自転車の旅はしたくない、と言っていたが、この冬休みまた出かけるという。今度は自転車好きの部活の先輩と二人で京都を目指す計画で、仲間がいるのが楽しいらしくいそいそと自転車のメンテナンスをしたりしている。

思春期のころというのは、いつもやわらかな不発弾をかかえているような感じがして、夏の頃のことも思い返すと、意識はしていなかったけれど、わたしの内心はああ、あれやこれや心配やら緊張やらしていたのだなとわかる。それは今も同じではあるが、いろんなことは絶えず形を変えて変化していて、そのときそのときというのはいつも一瞬のことだ。

自分の作った歌を読み返すと、どんな歌でもそのときそのときの空気が立ち上ってくる。長男の自転車旅行のころの歌を昨日の晩ひさしぶりに読み返したら、夏の熱く、ひりひりとした気持ちが鮮やかによみがえってきた。

○菜箸を片手に立ちつくすのみ吾子の放ちし二、三の言葉に
○「昨日から学校行っていないんだ」風呂上がりの子ふいに呟く
○わたくしの何かを分けてやることはもうできぬのか毛布のやうに
○声ひそめ鬼が来るよと言へば子が泣き止みてゐた近く遠き日
○「勉強をする必要がわからない」十代の言いさうなことを言ふ
○トマトとまとあかくまあるくてのひらに収まりてゐたおまへはトマト 美衣