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すっぱいもの、あまいもの
食べ物の好みは、かなり生まれたときに決まってしまっているのではないか。子育てをしていると、そんな気がしてならない。

我が家は子どもが三人で、みな男の子でご飯もみな同じようなものを食べさせたのに、と首をひねることがある。食べ物の好みが似ているのは、私と長男、次男、三男は夫に似ているようだ。

顕著なのが、すっぱいもの。次男と三男は、梅干しやらピクルスやらが大好きで、「ねえ、この宿題やったら梅干し一粒食べていい?」と聞くくらいである。わたしはといえば、梅干しはなくても平気。おにぎりの具も、梅干しよりも鮭や昆布の方が好みだ。長男も同じで、梅干しなんてなにがいいの?という具合だ。

三男が離乳食の頃、白粥をほんとうに嫌がったのには驚いた。食欲の旺盛な赤ん坊だったのに、白粥だけは心底いやそうな顔をして向こうに押しやった。粥が嫌なのかと、少し大きくなったら普通のご飯をやってみたが、やはり同じだった。一方、パンは大好きで離乳食のころなのに食パンを一度に2枚も3枚も平らげた。

三男が白いご飯を好まないのは今でも一緒だが、炊き込みご飯や味付きごはんは大好きで、要は濃い味好きなのだろうと家族は了解している。最近彼がほぼ独占して食べてしまったのが、ゆかり。今年の夏、わずか2キロばかりつけた梅干しと漬けた赤紫蘇をゆかりにした。これがたいそう気に入って、ゆかりをかけさえすれば、白いご飯を4膳も5膳も食べるのだから驚いてしまう。

好みが少しずつ違う兄弟がそろって好きなのが、あまいもの。パンケーキにメイプルシロップをかけるときなどは、かけすぎてしまわないように目を光らせないと、しばしば皿の上が大海のようになってしまう。

しかし、家族のなかのお母さんと言うものは「この子はこれが好きだ」とか「これを嫌がってちっとも食べない」などと困ったり、大変な気持ちになったりしながらも、自分の手から生まれた食べ物がおなかのなかに収まっていくことで、大きな幸福をもらっているのだと思う。

包丁を研ぎながら、梅干しをつけながら、芋の皮をむきながらときおりその幸福に身を沈めれば、これからもずっとおいしいご飯をつくっていけるのではないだろうか。

〇赤紫蘇を揉むたび両手の内側より出づるにごりよけふより文月  美衣