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冷蔵庫に貼ることば
わたしの冷蔵庫には、大切な手紙や子どもの絵、学校のプリントなどをずらずらと貼っている。冷蔵庫は家に入ってくる紙類たちのなかでいちばん大切なものだけを貼る特等席だ。息子のクラスメイトのお母さんにそんな話をすると、うん、うんとうなずいた。

彼女が「ずーっと貼っている新聞の切り抜きがあるのよ」、という。
〇しつかりと飯を食はせて陽にあてしふとんにくるみて寝かす仕合せ 河野裕子
この短歌が載っていた新聞記事を切り抜いて、冷蔵庫に貼っているという。彼女は子どもをついきつく叱ってしまったとき、くたびれてしまったとき、冷蔵庫のこの歌を読んであたたかい力をもらっている。

ああなんとうれしいことだろう。一人の歌人が読んだなんということもない子育ての歌、生活の歌が、時を経て一人の母親のもとに届いて、大切に口ずさまれている。

少し前に読んだ、松村由利子著『子育てをうたう』を思い出した。この本は子どもとのくらしをテーマにして近代のさまざまな歌人の短歌を引用しながら、著者のあたたかくユーモアのあふれる鑑賞と子育ての日々のことがつづられている。

いまから百年も前の与謝野晶子の歌、30年前の河野裕子の歌、現代の大松達知の歌。子どもとのささやかな暮らしと、自分の一番近くにある幸せをうたったたくさんの歌は、後のわたしたちへの贈りものだと思う。

〇腹立ちて炭まきちらす三つの子をなすにまかせてうぐひすを聞く 与謝野晶子
〇子は抱かれみな子は抱かれ子は抱かれ人の子は抱かれて生くるもの 河野裕子
〇わが体を内よりノックする人よ白いひかりは梅の花だよ 駒田晶子
〇子の目から大粒のなみだを絞り出しいつまでわたしは怒鳴っているのだ 森尻理恵
〇危ないことしていないかと子を見れば危ないことしかしておらぬなり 俵万智
〇巻尺をもちて図れるその体、声だして指の数は数へる 大松達知