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色と模様
本屋と図書館は当たりの日、はずれの日がある。
当たりの日はもう次から次へと面白い本が見つかって困るくらいだし、はずれの日はどんなにぐるぐると書架を回ってみてもこれ、という本が見つからない。

ちいさな子どもを抱えていると、本屋も図書館もなかなかゆっくりいけないものだ。日曜日、ひさしぶりに本屋に足を運んだ。
この日は当たりの日で、一抱えもある本を心弾みながらもって帰った。
その日買った本は、
●日本の文様
●日本の色
●クレーの贈り物
●パウル・クレー絵画のたくらみ
以上4冊である。

もう何とも贅沢なラインナップで、夜のふとんの中でなるべくゆっくり読み進めようと、はやる気持ちを押さえながらページを繰った。しかし驚くのは日本の色やデザインの豊かさだ。いったいこの時代と現代の間のどこへ、この豊かさを落っことしてしまったのだろうかと思ってしまう。

文様、模様というものは災いや病から身を守るものとしてできたという記述に、なるほどと思う。点が線になって、線がかたちになって模様が出来てきたと読んで、お世話になっている点と線模様製作所さんのお名前はこのところからきているのかと思い至る。

今よりも病気や天災で人の命が失われることの多かった頃には、布を植物の染料で染めることは虫除けの実用であり、そこにゆたかな色の重ねや模様を施したのは人の工夫と祈りなのだろう。そう思うと、ただ好みだけで色柄を選ぶのとはもう少し違った見方ができるような気がする。

たまたまこの本を手にした次の日に、テレビで染織家の志村ふくみさんの番組を放送していた。たまたまテレビを点けたら、番組の冒頭で、志村さんが大釜で梅の枝を煮出していた。釜が据えられた部屋には、もうもうと湯気が立っている。
梅の枝にはつぼみがついている。花がひらいてしまうと、色は花に移行してしまうという。
釜のなかの煮出された汁はうす茶色で、これで染めた糸で織った布はもっとうすい茶色なのだろうかと想像しながら見ていた。

次の場面、日本家屋の縁側に衣紋掛けにひろげられたきものは、なんともやわらかなうす桃色で、あっと驚く。これが花に移行するはずの色だったのか。冬から春に移り変わろうというときに、いちばんに先駆けてひらく梅の色、気配そのままの布は本当に見事だった。

その番組で織物のデザインはこんなところから生まれるのよ、というお話をしながら志村さんが手にしていたのはクレーの画集だった。クレーのわたしも好きなあの微妙な色合いのブロックがならんだ絵のモチーフは、クレーが子どものころよく遊びにいったスイスの石切り場の光景だと本にあった。

最近の夜の読書は、専ら色や模様の本、染めの本、写真集や画集など。
一冊の本が次の出会いを呼んだり、あたらしい世界を眼前にひろげてくれるのはなんと豊かなことか。
最近のうれしかったことのひとつだ。