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妹のケーキ
妹からケーキが届いた。お手製のそれは、りんごとブルーベリーが焼き込んであって、箱をひらいたときにうつくしさと豪華さに子どもたちの歓声が上がった。

家事炊事の類をしている姿を目にしたことがなかった彼女が、突如お菓子作りに凝りだしたと聞いたのが一年ほど前だったろうか。電話口で母と、変わったこともあるものだと言い合ったが、一年ほどの間にいろんなお菓子を焼き、途中からは料理も作り出したらしい。妹曰く、「できるけど今までやらなかっただけ」。これは彼女の口癖で、何かというと「できるけどやらないだけよ」というが、たいていのそれとは違って、妹の場合はやってみるとできてしまうあたりが小憎らしい。

小さい頃から鷹揚で、自信たっぷりで、こわいものなしで、めんどくさがりで、マイペースという妹の立ち具合を、わたしは子どもの自分から羨望していたところがある。8つも違うから、物心がついたときには、わたしはお姉さんで、家族からかわいがられるだけの存在の妹がいた。
ぎりぎりくやしかったり、逆立ちしたってできないなと感心したり、気楽でいいなと思ってみたりしていた。

年月を経ると、もうすこし離れたところから物が見えてくる。

鷹揚さは父母の仕事に忙殺される日々のなかで発揮せずにはいられなかったろうし、こわいものなしや自信たっぷり過ぎる言動は自分がたしなめられることでみんなの均衡を保ってくれていたろう。めんどくさがりで家の手伝いも長女のわたしばかりやっている気分でいたが、大病をしいろんなことに自信なんて持てないときにしゃかりきになって家族の夕ご飯係をすることで居場所をもらっていたのはわたしの方だった。

夕ご飯のあとのデザートに、家族そろって妹のケーキを切り分ける。さみしがりやで怖がりで、人一倍家族思いで、細やかだったんだよね、と呟きながらきれいな気泡が入ってしっかり焼き上げられたケーキを、盛大に「おいしいね、おいしいね」といいながらゆっくり食べた。