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雨の日の書店
いくつかの所用があり、朝から都内に出ていた。
朝の時分は吉祥寺、その後中野へ、そして東京に出て戻る、という算段である。

おりしも、このところの変わりやすい天候のま最中である。
いやに湿度だけが景気よく感じられ、まだらな雲とたっぷりした水気越しに
じりじりした日差しのしつこさがのぞく日だった。

念のために、日傘のほかに折りたたみの雨傘をかばんに入れてもっていたが、
吉祥寺の用事を終えて、駅に向かう途中、ぽつ、ぽつ、と雨が降り始めた。
信号が変わるのを待つわずかの間に、雨はにわかに土砂降りになってしまった。
亜熱帯のスコールさながら、そうなると折りたたみの傘など何の役にも立たない。

とても表にはいられなくて、近くの建物のドアをあけて飛び込む。
あかるいビルの中は、ちょうどショッピングモールだったようで、
わずか数十秒で膝から下が水浸しになってしまったわたしと対照的に、
からりと乾いて、安全で、小奇麗だ。
あまりの世界の違いにくらくらしながら、上の階の書店にいってみる。

小さくもなく、すごく大きくもない中くらいの本屋さん。

あまり期待しないで、詩歌のコーナーに行ってみる。
ふつうの本屋さんでこのコーナーはまずがっかりすることが多い。
歌集など1、2冊。
詩も俳句も短歌もごちゃまぜで、分類すらされていないところも
めずらしくない。

まず歌集が平積みで何冊も!
それが、また読みたいと思うものばかりなのだ。

ふらんす堂から出ている東直子さんの「十階」。
笹野宏之さんの「てんとろり」。
杉崎恒夫さんの「パン屋のパンセ」。

このあたりから発熱したように頭がぼうとしてくる。

詩歌のコーナーをよろよろと移動して、
書店を一周するまでに、いつのまにか両手にいっぱいの本を抱えていた。

あまりの興奮にレジでお会計するときに、
すばらしい品揃えでとてもうれしかったです、と言ってしまう。

紙袋ふたつを両の手に提げると、いちだんとずっしりと重みがある。
建物を出ると、さきほどの雨がまぼろしだったように
すでに雨はすっかり上がって、青い空が雲の間からのぞいていた。