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子ども時代をふたたび

子どもと過ごしていると、しばしば、「わたし自身が、もう一度子ども時代を経験させてもらっているのだな」と思う。追体験、というのだろうか。わが家は3人子どもがいるので、3度もそのような機会があったことになる。

 

大人には当たり前の景色が新鮮に映ること、足元のものにじっと見入ったり、時を忘れて空想をしたり、自然の現象をふしぎに感じたり、そんないつの間にか忘れてしまったことをもう一度かつての視線で見ることができる。大人の目線で教えたり、導いたりすることは必要だろうが、もう一度目の前の子どもと同じ目線で同じように楽しむのは面白い。

 

冬、外の金魚の甕に張った分厚いガラスのようなまあるい氷を持ち上げて顔を透かして笑ったり、なぜ台所の湯気が上に上っていくのか考えたり、童謡の一節から今読んでいる本のある場面を想起したり。当たり前だったことから、新しい発見はたくさんあるのだなと思う。

 

つい最近、10歳の子にと思って買った「大科学実験」というDVDブックがとても面白く、寝る前に付属の本を夢中になって読んでいる。当たり前だと思われている自然現象を、かなり大真面目にエネルギーをかけて実験をしている番組で、その馬鹿真面目の努力たるや感動すら覚えるほどだ。そしてこういうエネルギー、つまりは誰のためでも、何のためでもなくただただ夢中になってやってみる、やらずにはおられない好奇心のようなものは、いつも一番に大切にしたいと思うのだ。

 

〇たんぽぽの綿毛を吹いてみせてやるいつかおまえも飛んでゆくから  「たんぽぽの日々」俵万智

神奈川なでしこブランド

sun&beachベビーキャリアが、女性が開発に貢献した優れた商品として「神奈川なでしこブランド」として認定されました。

 

次男が赤ちゃんのときに、「自分の体と気持ちにしっくりする抱っこ紐がない」との思いから始めたベビーキャリアが、みなさまからの応援とともに今日まで続いてきたことを、改めて感謝とともにうれしく思います。

 

この仕事を始めたときにまだ赤ちゃんだった子供も、もう来年から小学5年生です。先日学校から、二分の一成人式の案内のお便りが届きましたが、同じ時にはじめたsun&beachも二分の一成人式なのだなあとちょっと感慨深いです。

 

来月2月4日(土)に、横浜・みなとみらいにて神奈川なでしこブランド展示・販売会を開催されます。sun&beachもベビーキャリアの展示販売を行いますので、お近くにお越しの際はどうぞお立ち寄りくださいね。

 

お会いできるのを楽しみにしています。

どんぐり

年齢のせいか、ここ最近の気候の変動のせいか、季節に気持ちがついてゆけない。もう11月だというのが実感としてなく、わたしとしてはいまだ8月くらいの時間の感覚だ。

 

とはいえ、季節はどんどんめぐり、家のストーブはつけるし、クリスマスツリーも飾り終えた。

このところ家のあちらこちらで目にするのが、どんぐりだ。と、いってももちろん我が家が大きな森の真ん中に、ひどく隙間があるように経っているわけでなく、たくさんのどんぐりを家に持ち込むのは、末っ子の3歳だ。

 

9月の末のことだったろうか。朝の散歩の帰りにみつけたどんぐりをポケットいっぱいに詰めて きて、ほら、差し出したそれはつやつやとあかるい緑色で、みずみずしくさえ見えた。

それが次第に色が濃くなってきて、今時分に家にころがっているどんぐりはもう深いはしばみ色で、表面もやや鈍く光り、頭のぼうしも乾いて取れてしまったりしている。

 

とりわけ緑色がうつくしく、形も端正なひとつを台所の窓のところに飾っておいたが、すぐによく知っているふつうのどんぐりになってしまった。

 

〇どんぐりはまあるい実だよ樫の実は帽子があるよ大事なことだよ 小島ゆかり『月光公園』

 

あたらしい本棚

最近、リビングにわたしの本棚ができた。リビングには大きな作り付けの棚があって、そこにわたしの本、子どもの本、文房具や、雑多なもの、書類、置物などなんでも置いていた。なかなかいい棚なのだけれど、奥行きがたっぷりしているものだから、本を入れると深すぎる。本もどんどん増えていくものだから、ついには三層に本を入れるようになって、奥の本はいったい何だったかわからなくなっていた。

 

そこで「本棚が欲しいなあ」と言ってみたら、本棚を家人が作ってくれることになった。置きたい本のサイズ、冊数、場所や、棚のイメージだけ伝えたらあとは大船になった気持ちでいよ、とのこと。あれやこれや条件や値段を比べて買い物をするのが苦手なわたしは、もうそれはただ楽しみなだけで本棚の完成を待った。

 

作る、とはいってもごく簡単なものだ。本を並べて出し入れしやすければよいので、レンガに板を載せたものを作ってもらった。幅や高さを慎重にきめて、一段の高さも計算をし、板をカットし、ペンキで塗る。自分でなにかをこしらえるのは楽しいものだが、自分のためにすてきなものを誰かがせっせと作ってくれるのを眺めるのはうれしい。

 

想像以上に素晴らしい本棚が、リビングの一角に据えられた。ぎゅうぎゅうにしまっていた本をみんな出してやって、本の上に溜まっていたほこりを払うと、本が息を吹き返したようだ。この本のとなりはこれ、この並びはこんな風にと本を並べていくのも楽しい。通りすがりに目についた本をひょいっと手に取り、そのままソファにごろりとするのも格別の贅沢な気分だ。そして本の、言葉の森のなかに深く潜っていくのだ。

 

〇風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける  笹井宏之『てんとろり』

 

春の手紙
手紙が好きだ。ポストに自分の名前が手書きされた封筒やはがきが入っていたら、きっとだれもがこころ踊ると思う。
メールなどではなかなかここまでうれしくはならないと思う。

〇白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう 斎藤史

春は手紙がいちばんしっくりくる季節ではないだろうか。春は草木が芽吹き、色のなかった季節にいっせいに色彩が生まれる季節。あたらしい何かが届く、はじまる、動き出すという手紙のイメージと重なる。「白い」手紙、「うすいがらす」というひらがな表記が清浄でみずみずしい感じがする好きな一首だ。

手紙は、よく書く方だった。中学生の時、重い病気で一年間病院のベッドの上で過ごした。携帯電話などないころだったから、外の世界とやりとりするには手紙を書くしかなかった。その一年間に書いた手紙、受け取った手紙は大きな段ボールにいっぱいの分量ほどだ。

〇果てしなき未来を載せむ一通の手紙の白さ朝にかがやく 美衣

そのころに作った一首。はっきりと認識はしていなかったが、そのころわたしにとっての手紙は外へのパスポート、未来への切符のようなものだったと今では思う。

仕事に、子どもたちの世話に、家のことと毎日ばたばた過ごしている今は、なかなか手紙を書く余裕がない。最近はもっぱらはがきを書くことが多くなった。はがきはほんの数分で書けて、それ一枚で出せるから気軽である。

はがきは学生のころから鳩居堂のものを愛用している。季節の草花をシルクスクリーンでうつくしく描いたシリーズばかり以前は愛用していたが、最近気に入っているのが簡素に枠と罫が入っただけのもの。罫の色が何種類もあり、季節や気分や宛先によって「今日はこの色にしよう」と選ぶひそかな楽しみもある。絵がないので文字もたっぷりかけるのもうれしい。